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リペアで大切にしている5つの事
1.お客様とのコミュニケーション
-目の前で相談する-
まず大切にしていること。それはお客様とのコミュニケーションです。作業に取り掛かる前に、説明と相談することを大切にしています。
まず楽器のどこに不具合をあるのか?そしてその不具合が演奏にどの様な影響を与えているのか? 解決するにはどのような作業がオススメなのか
楽器を目の前にしながら、具体的に説明いたします。そして、お客様が何に困っているのか、どういったご要望があるのか、具体的にでも抽象的にでも構いません。
演奏の不調を自分のせいと思わずにどのようなことでもご相談くださいませ♪
-シチュエーションに合わせた対応-
本番が近く時間的制約のある場合や、学校や団の楽器などで予算の制約がある場合眠っていた楽器を短期的に使用する場合等... お客様によって事情も様々です。楽器のポテンシャルを最大限引き出しつつ、調整の効果ができるだけ持続するような作業内容をまずご提案させていただいていますが、 お客様に出来るだけ寄り添い、楽器とお客様の為になる作業をご提案させていただきたいと考えています。
-お客様のご要望をぜひお聞かせください-
サクソフォーンは様々なジャンルで活躍することのできる楽器です。他の楽器に比べても、各々のプレーヤーによって理想とする吹き方があり
マウスピースやリードなどのセッティングによって同じ楽器とは思えないほど多様で、それぞれ違ってまいります。そして理想とする楽器の姿も、
各々のプレーヤーによって違うはずです。
お客様の「こうしたい」「ああしたい」を是非お聞かせください。
吹きやすく調整された楽器を使って、音を出す楽しさや喜びは、誰にでも共通する喜び、楽しさです。
2.トーンホールの完璧な塞がりを求める
-なぜ完璧に閉まってないといけないのか?-
サクソフォーンには約25箇所の「トーンホール」と呼ばれる穴が開いています。この穴を塞いだり開けたりして演奏しているため、楽器として上手く機能するためには、この「トーンホール」が塞がるべき時に如何にきちんと塞がっているのか?ということと、開いているべき時にどのくらい開いているのか?という2つの要素がとても大事です。
どちらも大切な要素ですが、とくに塞がりは重要で、塞がりが悪いことは、音の出しやすさ、音程の取りやすさ、強弱のやりやすさ、など、ほとんど全ての問題の原因となります。
すこしの隙間であっても、管楽器の原理的にオクターブキーの役割を果たしてしまうため、少なく無い影響があるのですが、サクソフォーンという楽器の特性上、ある程度自分でコントロールして吹けば、音自体は出てしまうという事も厄介な問題の一つです。
音は出ていたとしても、強弱や音程のコントロールをする時に必要だとして行っている操作が、本来は必要のない操作だとしたらどうでしょうか?上手くいかない原因は、自分のせいではなく、楽器のせいかもしれません。本来は必要のない操作を繰り返す事で、知らず知らずのうちに補正して吹いてしまうクセがついてしまったりする事もあります。
まず「穴が塞がっている状態にする」ということがリペア、調整の基本になります。
-パッドについて-
トーンホールを塞ぐ役割を持つパーツが「パッド」です。「タンポ」とも呼びます。この「パッド」は紙とフェルトと革でできており、 適度な柔らかを持ち、トーンホールに密着し穴を塞ぎます。パッドのメーカーやモデルもいくつかあり、革の柔らかさ、 反射板の素材や大きさ、厚み、個々の楽器に合わせ、最善の組み合わせを作ります。適切なパッドがない場合は自作のパッドを使用することもあります。
-シェラックについて-
パッドの接着には、熱を加えると溶け、常温で固まる性質を持った「シェラック」という昔ながらの天然の接着剤を使用します。 種類もいくつかあり、融点の低いもの、棒状のもの、フレーク状のものなどがありそれらを目的に合わせ、組み合わせたりして使用します。 シェラックの量は多すぎても少なすぎても良くない為、量を細かく調整できるということや、熱が均一に伝わりやすいという理由で、 メーカーで使用されているものと同じフレーク状のシェラックを使用しています。
3.キーの開きを適正に調整する
-適正な開きとは?-
キーの開き具合によって、音色やピッチなど様々な要素に影響を与えます。トーンホールからパッドまでの距離を「キーの開き」と呼びます。
この開き具合は、音色やピッチなど様々な要素に影響を与えます。
ためしに楽器を出して、音を出しながら、ゆっくり、そーっとキーを閉じたり、開けたりしてみましょう。
完全に閉じて音が変わる前に、音色やピッチが徐々に変化するのを感じる事ができると思います。
(「ソ」を吹いていたら「ファ」や「ファ♯」の左手人差し指や中指のキーをゆっくり押してみましょう)
このようにキーの開きは様々な影響を与えます。
-開きの基準-
サックスの管の形状はベルに向かって広がる円錐形をしており、広がるにつれて基本的にトーンホールも大きくなり、キーの開きもそれに合わせて広くなっていきます。
そこで左手Bisキーと右手Fキーの開きを基準とし、2つの点を結びつつ、管の広がり方に沿う形で他のキーの開きを合わせていくのが一般的なキーの開きの決め方です。
現代の一般的な楽器であればおおよそ以下の数値が目安といえるでしょう。
F | Bis | |
S.sax | 6.5 | 4.5 |
A.sax | 8.0~8.5 | 6.0 |
T.sax | 8.5 | 6.5 |
B.sax | 9.5~10 | 7.5 |
楽器メーカーごとやモデル、作られた年代によってもそれぞれ適正値は異なります。
一般的な楽器であればおおよそこの程度が普通ですが、これよりも広いと広い時の特徴が、狭いと狭い時の特徴がでます。
狭すぎる場合にはひどいときには音が出ないことや、ピッチが極端に悪くなる可能性などがあります。
広すぎる場合には、狭すぎる時のように音が出ないということはありませんが、やはり音色やピッチに影響がありますし、キーストロークが深くなるので、
キータッチに問題が出る場合があります。
4.心地よいKeyの動きとポジション
-キーアクションについて-
キーを押したり離したりした時の感触についてキーアクションやキータッチという言葉で表現される
「キーを押したり離したりした時の感触」は演奏においてとても大事な感覚です。キーを押したときに硬すぎたり、柔らかすぎたり、
「かちゃかちゃ」「ガチャガチャ」といったノイズがあっては、演奏の妨げになってしまいます。
心地よいキーアクションを生み出す為に、キーの稼働部についているコルクやフェルトなどの素材を適切なものにしたり、
バネの動きやキーが歪んでいないかをチェックします。
-正しい素材の選択-
キーそのものが摩耗によって隙間が生じてしまうこともあり、それが原因であることも多い為、様々なことに気を配りながら作業いたします。 押すときには柔らかく素早く動き、離したときにも素早いけれど、あまり音を立てない、指に吸い付くようなキーアクションを目指しています。
-キーポジションについて-
キーポジションとはキーの位置のことです。一般的にサックスはどのような人にでも吹きやすくフィットする様に作られてはいますが、
それが自分にとって理想のポジションであるという人は中々いません。特に学生や女性の方は、手が小さく「キーが遠い」「小指が届かない」
と感じて苦労している場合も多く見受けられます。サックスはある程度キーを曲げたりすることで、位置を調整することができます。
コルクを貼ったりすることで高さの調整も可能です。
理想のポジションは、自分の演奏スタイルの変化によっても変わっていくものです。ある程度は「体の慣れ」や「体の成長」といった要素も含みますので、
処置したキーポジションが後々かえって良くないことになってしまう事には注意しなければなりません。自分と手の形がまったく同じ人はいません。
お困りの方がいらっしゃりましたらぜひご相談くださいませ。
5.道具もパーツもなければ作る
-無ければ作るための機械-
取り扱う商品や、お客様からお預かりする楽器の中にはヴィンテージと呼ばれるような年代物や、既に無くなってしまったメーカーの楽器も多くございます。
その様な楽器ではパーツが欠損していることもありますが、パーツを入荷しようにも流通していない場合も多くあります。それらの楽器に対応する為にも、
パーツを制作する事のできる旋盤や、削るためのルーター、ヤスリ、磨くためのバフモーターといった機械の用意もしております。
-無ければ作るのはパーツだけではありません-
あるメーカーのあるモデルの〇〇部分を修理するためには△△の形状をした道具が必要、といったシチュエーションがあった場合、道具から作る必要も出てきます。 用途にあわせて適切な道具を加工したり、一から作ったりします。
-あなたにとっての一生物とは?-
パソコンや電化製品、車など、私たちが日々手にし、使用する現代の道具は、古くなれば使いにくくなり、新しくて便利な製品にとって代わられてしまいます。
しかし楽器はそうではありません。
演奏を仕事にしている方の多くも何十年も前に作られた楽器を大切に手を入れながら使っています。大切に扱い、
定期的にリペアを続けていく限り、何年でも使えるものであるのが楽器です。
そうして何年も続けて使う事で、楽器の特徴も理解し、愛着も沸いてきます。そして世代を越えて受け継がれる様なものへと変わっていきます。
お客様にとって世界に一本の大切な楽器をさらにもっと特別なものにする為に、大切に手を入れさせていただきたいと思います。